転職したい。そんな人へ。
給料が合わない、人間関係がうまくいかない、仕事が合わない、労働条件を変えたい。転職の理由は人それぞれです。
今の現状に不安を感じ転職を考えているけど、なにから始めたらいいか分からないあなた。こんな疑問をもっていませんか?
「転⽯苔むさず」という⾔葉があります。仕事や住居を頻繁に変える⼈は、地位も得られずお⾦もたまらないという意味で、イギリスの諺です。従来日本においても終身雇用が機能している間は、この常識が通っていました。「⼀つに会社で最後まで勤め上げる」という美意識が社会にはあったのです。
しかしグローバル化の波が押し寄せ、大手企業のリストラや非正規雇用の増加など社会事情が大きく変化する中、日本人の働き方も大きく変化してきています。
その代表的な考え方の一つは、
「すぐに会社に利益貢献できる⼈材を採⽤する」
という考え⽅です。ご存知の通り、欧米の社会では企業に対する株主の影響が非常に強く、よほどのオーナー企業でない限り、短期で業績を求められます。その結果、社員に対しても短期で業績結果を求める傾向が強いのです。
欧米では、転職することは日本よりもかなり一般的です。そもそも仕事に就く目的が、その会社に仕えるだけでなく、⾃分⾃⾝のスキルの向上と実績作りという目的を意識しているケースが多いのです。
「あなたは会社に対して、具体的にどういった貢献ができますか?」このテーマが、常に転職にはついて回ると言っても過言ではないでしょう。
⽇本の場合、⼤企業を中⼼にまだまだ⻑期勤務志向の企業が多いのは事実です。しかしシャープや東芝のように会社の施策が原因で急激に財務状況が悪化し、ある日突然自分が所属する事業部がリストラの対象になる可能性は否定できません。どんなに有名な大企業に在籍していても、自分の人生の自己防衛という意味で、常に転職の備えが必要な時代なのです。
Google⽇本法⼈代表取締役を務めた村上憲郎⽒は、「会社からお給料をもらいながら、何を得るかが重要」と語っています。
今後日本における働き方も相当変わってくるのではないでしょうか。私のまわりでも、大学卒業後リクルートやソフトバンク、楽天、DeNaなどベンチャーシップの強い⼤企業に⼀旦⼊社し、お給料をもらいながらビジネスの基礎や組織運営の⼿法を学び、その後そこでの実績やノウハウを活かせるベンチャー企業で権限を拡大しながら経験値を高め、成功の確信が持てた段階で⾃分で起業したり、更に上の企業へステップアップしていく⼈が結構います。
彼らに共通するのは、⾃分の夢と⼈⽣を⼤切にし、そのための努⼒を惜しまず、24時間考え抜いて⾏動していることです。また情報感度も非常に⾼く、⾃ら動いて⼈脈を作る技術に⻑けているのも大きな特徴です。
転職を否定的に考えず、むしろ⾃分からその会社のノウハウを取りに⾏くぐらいの気持ちでいく攻めの⼈⽣の⽅が、⼈⽣もエキサイティングになるのではないでしょうか。転職を戦略的に活⽤する生き方は、間違いなくもっとメジャーになってくると感じています。
日本の教育では、「自分にとって、一番ふさわしい職業は何か」ということを考えるためのカリキュラムがほとんどありません。⼤学⽣にとっての⼈気企業ランキングが、企業イメージの良さに左右される現象はその象徴たるものでしょう。
欧米ではインターンシップが社会に浸透しており、大学在学中に様々な企業でインターンシップをすることで自分の仕事適正チェックからコネ作りまで、いろんな経験を積む仕組みが定着しています。
かの有名なスティーブ・ジョブスの有名なエピソードがあります。1971年⾼校⽣になったスティーブ・ジョブスは、アメリカ有数のパソコンメーカーヒューレット・パッカードの夏季インターンシップに参加します。そこで、後ほど⼀緒にアップルを⽴ち上げることになる天才プログラマー、スティーブ・ウォズ二アックと出会います。
⼆⼈はすぐに意気投合し、ウォズ⼆アックの通っていたカリフォルニア⼤学バークレー校の寮で、違法の無料⻑距離電話を開発し、1台100〜150ドルで売りさばきます。⼆⼈はその後資⾦を集め、⾃分達で製造したコンピュータを売り出します。そしてそれが、あの世界的企業アップルに成⻑していくのです。アップルの誕生のキッカケは、実は夏季インターンシップだったのです。
良い⼤学に進学するために⼀⽣懸命勉強し、⼤学⼊学後はサークル活動やアルバイトに精を出し、就職活動ではじめて自分の将来について考えるパターンが非常に多いように思います。しかし、大学3年から将来のことを考え始めても実は遅いのです。しかも⽇本の場合、その本質は“就職”ではなく“就社”のパターンが多いのもネックになっています。どんな仕事で食っていくかではなく、どの会社に入るかということですね。
そういった非常に短期間で自分の将来を決めざるを得ない構造が、新卒入社3年以内の離職率31.9%という悲劇につながっていると思います。ただそういった事情があるにしても、転職活動で成功するためには、採用側がどんな経歴をどういう視点で判断しているかを知っておく必要があります。
結論から⾔うと、⼊社もしくは転職して1年以内で会社を辞めることは絶対に避けた⽅が良いということです。1年以内で会社を辞めたという経歴は、採⽤プロセスにおいて書類選考で落とされる確率が非常に⾼まるからです。
正社員になるということは、採用する側も採用される側もそれなりの覚悟を持って同意に達します。リアルな話、採⽤する側にとっては⽀払う給料分がペイするかどうかわからないリスクをおかして雇用しているわけです。1年以内に離職してしまうとまさに「給料泥棒!」の事態を引き起こしてしまうのです。本人にとってはそのつもりがないのがほとんどだとは思いますが、企業サイドがそう⾒ているということは理解しておく必要があります。
採用する側と採用される側の暗黙の合意の崩壊という側面以外に、本人のストレス耐性という資質の問題があります。
仕事には様々なストレスがつきものです。職場の人間関係、仕事内容、各種プレッシャーなど、挙げると切りがありません。
例えば営業職で最たるストレスの⾼い業務の⼀つが、新規開拓営業です。特に膨⼤な架電リストを渡され⼀⽇中電話をかけるテレマーケティングや⾶び込み営業といった⼿法は、厳しい⾔葉を返されることも多くつらい仕事です。
私が入社した頃のリクルートでは、新人営業マンには『1⽇名刺獲得キャンペーン』という名物施策を実施していました。各⾃割り当てられたエリアに⾶んでいき、どんな⼿段を使っても良いからとりあへず名刺をたくさんもらってくるわけです。そして⽇々の獲得累計枚数が⽇報に表⽰され、キャンペーン期間中に最大枚数獲得した新人営業マンが営業部ごとに表彰されるというものでした。
今から考えると、これは新しく入社した新人に対するストレス耐性チェックでした。また同時に、自由競争の醍醐味をゲーム的に可視化したマネジメントだったように思います。このキャンペーン期間中にプレッシャーについていけず、入社数ヶ月で退職した同期が何人かいました。
またWEBデザイナー職やプログラマー職の場合、納期前の追い込み業務があります。この場合、繁忙期で致命的なミスを犯さない正確性や肉体的なタフさも要求されます。私自身も経験がありますが、ピーク時は精神的にもみんなイライラしていて、ちょっとしたことでも感情的なもつれに発展してしまいます。そういった肉体的にも精神的にも追い込まれた状況で、いかにクールに業務を遂⾏できるかどうかは、会社としてはとても重要視する資質なのです。
いわゆる名門進学校から現役ストレートでトップレベルの⼤学に⼊学し、成績も優秀だったものの就職活動で挫折し、本⼈的に不本意な会社に⼊社し1年で退職してしまった人物がいました。彼はその後も転職を繰り返し、いろんな業界を渡り歩きながら安定的に⾃分の良さを発揮できる場所を作り出せていません。
⼀⽅でそれほど⾼くないレベルの出⾝⼤学でもコツコツと結果を出し、部下からも慕われ、現在出世している人物もいます。
退職した本人達は、当時は本当につらくて退職したのだと思います。しかしその後の転職活動におけるリスクを考えると、そこはつらくてもグッと我慢をして最低でも4〜5年働いてから転職した⽅が転職市場の統計学的にも圧倒的に有利なのです。
我慢も必要!
「転職したい!」と一時的な感情が起こっても、まだ入社もしくは転職後1年未満であれば、そこは理屈抜きに我慢することです。そして今の会社で⾃分が置かれている状況や環境を客観視し、学べることは全て吸収するぐらいの気持ちを持てば、3年ぐらいすぐに過ぎるのではないでしょうか。
⺠間企業で働く場合、その企業の経営メンバーでない限り、今後の収⼊の安定の確信が持てる⼈はいないといっても過言ではありません。過去に発生した大企業の倒産劇において、その多くは社員は経営実態を知らされず、ある日突然自社の窮地を知って愕然としたのです。家のローンや子供の教育、親の介護など、様々な人生設計が全て白紙になるリスクは、誰にでもある時代なのです。
倒産リスクが低い成⻑分野、⾼い報酬が望める職種、もしくは⾼い値段がつく技術・スキルを意識しながら⽣きていくことが非常に重要です。もっと⾔うと、勤める会社からお給料をもらいながらしっかりとリターンを返し、かつ会社のメリットと⾃分の将来軸が重なる領域を設定し、会社の信⽤⼒とリソースを上手く活用しながら将来につながる基盤形成ができると理想です。
こういうと難しく聞こえるかも知れませんが、例えば美容師さんの独⽴をイメージして下さい。彼らの多くは美容系専門学校を卒業後、サロンでアシスタントとして基礎技術をマスターします。その後スタイリストとしてお客さんを任されるようになると、カット技術や話術を駆使して売上に貢献します。そして副店⻑、店⻑と昇進しながら、部下の育成・マネジメント、エリアマーケティングを学びます。
独⽴志向の⼈は、この間ずっとお給料をもらいながら
といったことを考え、準備をしていくわけです。もっというと、センスが良くて儲かっている美容サロンに⼊り、お給料をもらいながらそのノウハウを学ぶのです。
どんな業界でもそうですが、
“成功への一番の近道は、成功者から学ぶ”ことです。
ただ時代遅れのビジネスモデルには、気を付けなければなりません。
そうやってできれば元の古巣の支援も得て、自分の客筋を持って⿊字シミュレーションの状態で独⽴できれば、ベストです。専門職の場合は、より⾼度な領域への転⾝がこれに該当します。いずれにしても、ある日自分の会社が倒産しても大丈夫な位のシミュレーションを意識した⽣き⽅が必要な時代になってきたと言えるでしょう。
現代の大きなビジネスチャンスは、テクノロジーの変革から生まれると思います。
それは⾦融業界を変えるかも知れないフィンテックかも知れませんし、ビックデータの活⽤⽅法が変わる人工知能かも知れません。ただ一つ言えることは、新しい大きな需要が誕生した時には必ずバブルが誕生し、通常の労働では得られない富を得るチャンスが生まれるということです。
1990年末期から2000年代初期にアメリカを中心に起こったインターネット・バブルがまさにそうでした。ドットコム会社と言われるITベンチャー企業が⼤量に設⽴され、異常なくらい⾼い株価をつけました。当時シリコンバレーには、多くの若いIT⻑者が誕⽣し、みんな競ってポルシェを買い求めたそうです。
そう考えると、転職は「今よりもヤリガイの大きな仕事とより高い収入、広い権限の獲得」といった側⾯だけでなく、「数年後にバブルが⽣まれるかも知れない超成⻑市場への移籍」という戦略的な考え⽅もアリだと思います。